甘い恋の誘惑
それからのあたしと大和の関係は至って普通だった。
とくに大和はあたしを避ける事なくいつも通りに接してくれた。
今までと全然変わらない風景、変わらない光景。それがこのままずっと続くと思ってたんだ。
そう、ずっと続くと思ってた――…
でも、それを少しずつ変えて行く毎日の日常から、あたしの中にある大和と言う存在が少しずつ…少しずつ…なくなり初めていた。
そう思わせる出来事が起こったのは冬。寒い寒い季節がこれから訪れようとする12月に入った時だった。
Γねぇ、アユ!!」
そう言って大声を出して駆け寄ってきたのは莉子。
莉子は慌てた様に机にうつ伏せになっているあたしを叩いて起こし、あたしの顔を覗き込んだ。
Γ何?」
Γちょ、今さ…職員室の前を通り掛かった時に聞いたんだけどさ、大和に女いるらしいよ」
莉子はいつもより興奮気味た声で話す。そんな莉子とは裏腹にあたしには興味がなかった。
大和に女?そんなのしょっちゅうじゃん。いつもいつも毎日、女に囲まれてんじゃん。
今更、何言ってんのか莉子は…
Γってか、いつもの事じゃん」
そう素っ気なく返したあたしに、莉子は素早く目の前で手を振った。