甘い恋の誘惑
教室に戻ってからいつも通りにあたしは耳にイヤホンを押し込みiPod本体を目の前で弄(いじ)りながら適当に曲目を変えてた。
そのあたしのまん前で莉子は雑誌をペラペラと捲りチョコレートを口に運ぶ。
暫くお互い何も話さない時間が過ぎた時、ふと見上げた莉子の視線が気になってあたしは視線を上げた。
見上げる先には一枚の紙切れをヒラヒラとさせた俊が経っていた。そのヒラヒラとさせた紙切れを莉子は嬉しそうに受け取り、あたしは無意識の内に音量を下げていた。
Γ俊、ありがと」
Γあぁ」
お礼を言った莉子の手には映画のチケット。何の映画なのかは分かんないけど莉子は嬉しそうに見つめていた。
その莉子の顔付きがパッと思い出したかの様に一気に変わり、
Γねぇ、何で急に大和、女作ってんの?」
突然何を言いだすやら分からない莉子にあたしは驚いた。
その俊からの返事を待ってた訳じゃない。待ってた訳じゃないけど、iPodを握り締めるあたしの手は無意識の内に音量を切ってた。
目線はiPod。だけど耳は俊の方向――…