甘い恋の誘惑
なんだろう…。
そうさせていったのも日常生活なのかもしれない。
あたしの家系はいたって普通。お父さんにお母さんにあたしにアン。
裕福じゃなければ貧乏でもない。至って普通。だけど、やっぱしお金は切り詰めたいもので、洋服もお菓子もオモチャもなんだって同じ物が一人に一つあったのが大きくなるにつれて減っていた。
だからなんだろうか…。
“アンのお菓子だもん”
“あたしにだってちょーだいよ。この前のお菓子、あげたじゃん”
そう言って、アンの持っているお菓子を何回か奪った事があった。
でもアンは、“アユちゃんが取った”そう言っていつも泣いていた。
そんなアンを見たママは口癖のように言ってたんだ。
“アユ!!アンにもあげなさい。半分って言ったでしょ!!”
そう言われて半分にしたお菓子。でもアンは泣くばかりで泣き止もうともしなかった。だからママは、そんなアンを見てあたしに言ったんだ。
“アユ?アンが泣き止まないからアユの分、少しあげて”
そう言われて、あたしは渋々アンにあたしのお菓子を少しあげてた。
お菓子をあげたアンは上機嫌で微笑んで、さっきとは打って変わって表情をいつも変えてた。
その頃からだと思う。
何もかも全てを奪うアンが嫌いになったのとあたしが笑わなくなったのは…