甘い恋の誘惑
触れ合う体温とか優しさとか全てをくれるんだけど、その全てがあたしには物足りなかった。
だから気付いた時にはあたしから別れ話を切り出してた。
心のどこかにポッカリと小さな穴が空いた感じ。その空いた穴を塞いでくれるのは何なんだろうか…
ユリちゃんと他愛もない会話をした後、あたしは食堂を離れ売り場へと足を進ませた。
少し進ませて歩く途中、
Γあ、アユちゃん?」
背後から聞こえた声に振り向くと、そこには雄二さんが居た。
Γあ、お疲れ様です」
Γお疲れ」
そう笑顔で返してくれるのは3個上の紳士服で働く雄二さん。
売り場とかでの顔合わせ、店長会議などで知り合った雄二さんとは時たま話す程度。
Γアユちゃん、今日何時上がり?」
Γラストです」
Γもしその後、空いてたら一緒に食事でも行かない?」
そう雄二さんは優しく微笑みあたしを誘い出す。
Γあー…別にいいですけど」
特に断る理由が無かった。ただ言い訳とか考えるのが邪魔くさかった。
そう言う所は何だかんだ言って昔のあたしと変わっていない。
雄二さんの事は嫌いじゃない。だからと言って好意を持ってる訳でもない。
ただ優しい大人の異性としか思えない存在の一人。