甘い恋の誘惑
だからだと思うんだ。
アンと同じに思われたくない。アンと同じ物を持ちたくない。アンと同じ服を着たくない。
そして変な所でアンに気を使うようになったのは…
小さい頃から変な所に気を使うようになって、アンのワガママも聞いていたあたしをママはいつも、そっと抱き締めてくれた。
アユ。ごめんね…って。でも、あたしはそんな言葉なんていらなかった。アンと比べられる事、自体嫌だった――…
だからあたしは高2の途中から変わろうと思った。
いつもは瓜二つと言われていた、あたしとアン。それが嫌なあたしは今まで以上に派手になってた。
ロングの薄ら茶髪から金に近いような髪。ストレートからコテでいつも巻くようになった。
ナチュラルメークから本格的な化粧。膝上10センチのスカートを膝上15センチ。
これも全部あたしとアンを間違えられたくないからした事。
もちろん初めは、皆あたしの事を唖然として見てた。アンにまで“アユどうしたの?”って言われた。
そんな気軽に話してくるアンはあたしがアンを嫌っている事は全く知らない。
別にここまで変わる必要はないと思う。でも、あたしはそれほど“アン”と間違えられてほしくなかった。