甘い恋の誘惑
Γあー!!アユーー!!」
憂鬱な気分のまま顔を顰めていると、不意に聞こえてきた弾けた声で、あたしの表情はすぐに戻った。
その方向に目を向けて、懐かしい懐かしい顔が現れ、手を振ってこっちに向かってくる莉子が目に入った。
微笑んで来る莉子に手を上げた瞬間――…
その瞬間にあたしの目はある所に奪われた。
Γ…え?」
一瞬、何が起こったのかが分からなかった。向かってくるのは莉子。あの当時の面影がそのまま残っていて、違うと言えば大人っぽくなっている。
だけどもっと違うのは莉子のお腹だった。
Γアユー!逢いたかったよぉ…。あたし淋しかったんだからぁ」
近づいてきた莉子は半泣きになりながらあたしの首に両腕を回し抱き締める。
だけど抱き締めると言っても抱き締めていない。両腕を首に回すだけで身体はくっついてない。
その所為は大きくなってる莉子のお腹の所為で――…
Γ…え?莉子、どうしたの?」
そう小さく呟いてあたしは目線を下に落とした。
そんなあたしに莉子はへへっと笑って、あたしの首から両腕を離す。
Γ出来ちゃった」
そう言って笑いながらお腹を擦る莉子にあたしは目を見開き、ただ呆然として莉子のお腹を眺めてた。
出来ちゃったって言う程じゃない。もう何日か…いや、もう数ヶ月経っていて張り裂けるお腹からして、もう産まれるのも間近ってくらいに大きい。