甘い恋の誘惑
Γさぁ、どうだろね」
Γまたまたアユは…」
何が言いたいのか分からない莉子は嬉しそうに笑みを見せた。その懐かしい笑みに“帰って来て良かった”って今、改めてそう思った。
Γね、何か食べよ?」
Γあ、うん」
近くのテーブルに行き、莉子が淹れてくれたオレンジジュースを受け取り、あたしはそれを口に含んだ。
テーブルの上に大量に敷きつまれた料理に、莉子は箸を進める。
周りから懐かしく騒ぎあう声などが聞こえ、勝手に進められているビンゴゲームをやりたい人達だけがやっている。
ワイワイ、ザワザワする中、誰が歌っているのかも分からない歌声がマイクから響いていた。
周りを見てもイマイチ誰が誰なのか分からない。何となく分かる人もいれば人柄がコロッと変わっている人達。
と言うよりも、元々、皆に興味がなかったあたしだから、さっぱり分からなかった。でも、それとは逆に何故かよくあたしの名前は聞こえる。
Γやっぱ…アンの所為か…」
ポツリと呟いた声に、Γえ?何?」なんて言葉が莉子の口から聞こえる。
そんな莉子に軽く首を振った。
まぁ、アンの“所為”にするつもりはないけど、やっぱそう言われると、しっくりこない。
ってか、もうどうでもいいけど――…
Γうわっ!!すっげぇ懐かしい顔」
不意に聞こえた驚きの声に目を向けると、手にグラスを持った俊が居た。