甘い恋の誘惑
Γ久しぶり」
そう言って俊に目を向けると、
Γ久しぶりっつー限度じゃねぇだろ」
莉子同様、不貞腐れた声で返ってきて思わず苦笑いをした。
Γまぁ、そうだね」
Γそうだねじゃねぇっつーの」
呆れた様に呟く俊の隣で莉子はケラケラ笑う。
Γあ、ってかさ、俊ってパパじゃん。おめでとー大丈夫?頼りなさそうだけど」
Γうっせぇよ」
嫌味ったらしく言うあたしに俊は投げ遣りになって返す。そんな俊に思わず笑みを漏らした。
あたしの前で飲み食いしている莉子と俊を見ながら他愛ない会話を暫く続けた時だった。
突然、何か分かんないけど女の悲鳴と言うか華の咲いた声が飛び掛かる。
キャーキャーと言ってんのか分かんないその声に、あたし同様、莉子と俊は辺りを見渡した後、莉子はポツリと呟いた。
Γアユと同じく帰って来ない奴が来たわ」
苦笑い混じりにそう呟いた時、俊はあたしの背後に向かって目を送り、片手を上げた。
その方向に目を向けようとした瞬間――…
Γ悪い。遅くなった」
その声と同時に向けた目の先には少しだけ息を切らした――…
懐かしい懐かしい大和の顔があった。