甘い恋の誘惑
Γマジ遅せぇっつーの」
Γ本当だよ。大和といいアユといい、あたし達を放置して」
Γ別にしてねぇし」
大和は素っ気なく返し、テーブルに置かれているグラスに麦茶を注ぎ口に含んだ。
久しぶりに見た大和はあの頃よりも大人っぽくなってて、あの若々しい面影もすっかりなくなってた。
大和とは5年間、話してなくて5年間、会ってない。その月日が一気に流れた今でも、あたしの頭の片隅から一つだけ消えない事があった。
大和から“付き合わね?”って言われた言葉は今でも忘れてない。記憶から消そうと思っても何故かその言葉だけは消えなかった。
だけど大和に彼女が出来たって知った時からあたしは大和を少しずつ避け、そして会話もしないまま卒業をし、あたし達は離れた。
Γつーか、お前も相変わらずキャーキャー言われてんな。アユも言われてたしよ。俺も言われてーよ」
半笑いになって言う俊の隣で莉子は顔を顰め、おもいっきり俊の頭を叩いた。
Γいってぇな!!」
そんな俊の声を無視し、莉子はそっぽ向く。
Γお前、速攻浮気かよ」
クスクス笑う大和の仕草はあの頃と同じ。全く変わってない。
Γちょっとケーキ補給」
未だに不貞腐れた莉子はそう言ってこの場を離れる。そんな莉子を宥め様と莉子の顔を伺いながら着いて行く俊。
その光景に思わず苦笑いをするあたし。