甘い恋の誘惑

暫くの間、あたしはソファーに身体を預けてた。いつものハードの仕事が今になって身体を痛めつけ、凄く重く感じた。

横たわった身体がなかなか起き上がろうとしてくれない時、


Γアユ…」


その聞き覚えのある声で一気にあたしの身体は起き上がった。


Γ疲れてんのか?」


そう言いながらあたしの隣に腰を下ろすのは大和。


Γあ…、大丈夫」

Γ久し振りだな、アユ…」


そう大和の口から出た“アユ”の言葉に思わず胸がジン…と来た。

高校だった頃、何度もその声で呼ばれ、何度も助けてもらった大和の声。


何だか分かんないけど大和の声を聞くと安心する。


Γうん。久し振り」

Γ元気してたか?」

Γまぁね」


そう呟くあたしに大和は薄ら笑いポケットからタバコを取り出した。

口にくわえて火を点ける仕草。口の端の方で吸う仕草。あの頃と全然変わってない。


大和は基本的、あたしの前ではタバコを吸わなかったからよく分かんないけど、でも何だかその仕草がつい最近の様に感じた。


Γ莉子から聞いたけど、アユ店長なんだって?」


そう言って大和はタバコをくわえたままあたしをチラッと見た。


Γあー…。だけどまだ右も左も分かんない新前だけどね」

Γけど、すげぇじゃん。頑張ってんだな」


苦笑いするあたしに大和は口角を上げ、ソファーの横にあった灰皿入れにタバコの灰を落とした。


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