甘い恋の誘惑
Γ俺、今アユの近くに住んでる」
Γえぇっ!!」
大和が言った言葉に思わず声を上げると、大和はまたクスクス笑みを漏らした。
Γつか、近くだなんて知んなかったけど、1年前くらいにたまたま俊と会った時にそう言ってたから」
Γそうなんだ…」
Γま、近くっつっても隣町だけどな」
Γへー…」
知らなかった。大和が近くに住んでた事なんて…。大和はあたしの事を何かと知ってる。あたしが店長になってる事とかも住んでる所とかも。
その情報源は俊と莉子しか居ないけど、あたしは大和の事すら莉子に聞いた事がなかった。
あたしが話さないから莉子は口に出してないだけなのかも知れないけど。でも、あたしの心の何処かで大和を消そうとしてたのかも知れない。
でも結局は忘れる事なんて出来なかった。今、こうして出会うとあの頃一緒に過ごしてた思い出が次々と蘇ってくる。
あたしが苛立ってどうしようもなくって家に帰れない日はあたしを連れ出してくれた。絶対に大和はあたしを見捨てる事なく必ず家まで送ってくれた。
Γ懐かし…」
不意に零れ落ちた言葉に大和は、Γうん?」と言って天井からあたしへと目線を送る。
その大和と目が合ったあたしは薄らと笑い、口を開いた。