甘い恋の誘惑

一瞬、顔を顰めた大和は身体を少し起こし、タバコをくわえたままポケットから携帯を取り出す。

画面を開けて躊躇ったのか、ジッと相手の番号を見つめた後、鳴り響くメロディーを消しパチンと携帯を閉じた。


Γいいの?出なくて」

Γあぁ」


素っ気なく返してきた大和は、また身体を深くソファーに預けた。

携帯もあの頃と変わってない。相変わらずよくなる携帯も変わってないのかと思うと何とも言えない笑いが込み上げてきた。


Γ相変わらずモテてるね」


チラッと見て言ったあたしに、Γうん?」と大和は目線だけあたしに送る。


Γだからモテまくりだねって」

Γさぁな…つか、アユだって色んな声飛んでんじゃん」

Γよくない話ね」


苦笑いするあたしに、


Γさぁ、どうだろな」


大和は曖昧に呟いてフッと鼻で笑った。


Γ大和って今、一人で住んでんの?」

Γは?」


分かんないけど、あたしは気付けばそんな事を聞いていた。大和は急に何だ?って顔をする。


Γだーかーら、一人暮らしかって事」



ユリちゃんじゃないけど、ユリちゃんが言ってたみたいに大和は女の一人や二人いそう。

それが聞きたい聞き出したいって思った訳じゃない。思った訳じゃないけど、あたしは大和にそう聞いていた。


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