甘い恋の誘惑
Γ1組のクラスで写真撮るってさぁー。だから大和も早く来てー」
弾けた声が響き渡ると大和は深く息を吐き出し、
Γ面倒くせぇ!!」
2階に向かって大和はそう叫んだ。
Γダメダメ!大和は入んなきゃダメ。早くしないと次のクラスも順番待ちなんだから!!」
だんだん口調が強くなってくる女の声に、
Γ面倒くせぇっつってんだろ」
ため息混じりに大和は吐き出し、仕方なくと言った感じで立ち上がる。
2階に居る女は手すりから前のめりになるように身体を出し、両手で手招きをしている。
Γアユごめん。つか、アユも来いよ。順番っつってるからアユのクラスもあんだろ?莉子も探してんじゃね?」
Γあ、う、うん」
戸惑い気味に返したあたしはソファーから立ち上がり、前をダルそうに歩いて行く大和の後ろを歩いた。
歩いてる途中、頭の中で何かが引っ掛かった…
“俺、やっぱアユ――…”
その後は何?その後に続く言葉は何だったのか…。だけどあたしは前を歩いてる大和には何も聞けなかったし、大和もその後について何も言ってこなかった。
気になったまま会場に入ると、真っ先にあたしの元に飛び込んできたのは莉子だった。
Γもーアユ何処行ってたのよ!!」
Γごめん、ちょっと休憩」
Γ大丈夫?」
Γあーうん、全然」
Γってか、アユ全然食べてないじゃん。まぁ、昔っからアユは食べないけど、ちゃんと食べないと身体に悪いよ?あたしなんて食べ過ぎなのに」
苦笑いしてそう言った莉子のお腹にあたしはそっと触れた。
Γ莉子は食べなきゃダメだよ。ちゃんと…生きてんだから」
お腹を擦りながら薄ら笑うあたしに莉子はコクンと頷いた。