甘い恋の誘惑

その後、ママが淹れてくれたココアを飲みながら、あたしはママと他愛ない会話をした。

今、あたしが店長してる事とか休みの日は疲れて1日中寝てるとか、本当に本当に私生活の話。


ママはくだらないあたしの話を嬉しそうに聞いてくれて、そんな他愛ない会話を朝方まで2人で語ってた。

日が上りはじめる頃、あたしは久し振りに自分の部屋に入って、何も変わってない、あの頃のままの懐かしい部屋で昼過ぎまで寝てた。

日が落ちる頃、帰ろうとするあたしにママは手作りのお菓子をくれた。袋の中にはまだ温かいクッキーとカフェオレ。

電車で食べなさい。って持たせてくれたクッキーに少しだけ目が潤んだ。

結局アンはあたしが帰る頃まで姿を現さなかった。あたしに会いたくないのか知んないけどアンは帰って来なかった。


だけどママが言ってた。アンも今、ショップで店員やってるみたいで。アユとアンは似てるねって…

あたしには分かんないけど、やっぱ他から見ると似てるらしい。そう言われて“嫌”って思わなくなったのは何でだろう。


分かんない…。それこそ歳月が流れていった証なのか…


電車に揺られながらママが作ってくれたクッキーを頬張りながら、あたしは2日間に起こった出来事を思いだしてた。


あの、大和が言ってた意味。そして莉子の意味。アンの変化。


その全てが分かりだしたのはそれから1ヶ月後の事だった――…


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