甘い恋の誘惑

Γどうしたの、大和…」


ユリちゃんとミキちゃんが姿を消した後、あたしは大和に近づきそう声を掛ける。

大和は両手をポケットに突っ込み、一旦落とした視線を上げてあたしを身構えた。


Γ俺、あんま時間がねぇんだけど、アユに言いたい事あっからちょっとだけ俺に付き合って」

Γあー…うん。いいけど」


そう言ったあたしに大和は、Γ悪りぃな」と言って歩きだした。

その大和の背後を追うようにあたしは足を進める。何処に向かうのかも分からない途中、大和は自販機に行き2つの缶珈琲を取り出した。

その一つの缶珈琲をあたしに渡し、また足を進めた。少し歩いて着いた場所は駐車場で、そこに停めてある白のセダンの前で大和は足を停めた。


Γこれ、大和の車?」

Γあぁ」


そう言って大和はタバコを取り出して火を点けた。大和と会って1ヶ月しか経ってないけど、その顔が何だかもの凄く懐かしく感じる。


Γ大和さ、いつからあそこに居たの?」


ふと気になった事を口に出すあたしに、大和はタバコをくわえたままあたしを見た。


Γわかんねぇ…」

Γわかんねぇって何時だったとか分かるでしょ?」

Γわかんねぇよ。時計見てねぇし。まぁ多分、夕方くらい」

Γは?」

Γえ?」


大和は“何だ?”って言う顔付きであたしを見つめた。


Γずっと居たの?」

Γあぁ」

Γ何で?」

Γ何でってアユに話があるからだろうが」

Γそれだけに夕方から待ってたの?」

Γそれだけって言うなよ」


大和はため息混じりにそう呟き、顎で助手席を指した後、大和は運転席へと乗り込んだ。


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