甘い恋の誘惑
未だに立ち尽くすあたしに、大和は中から助手席のドアを開け、Γアユ!」と口を開く。
その声に釣られてあたしは助手席へと乗り込んだ。
Γつか、ごめん。こんな所で…」
Γあ、うん。…仕事?」
Γあぁ。アユんちまでちゃんと送るから」
Γ大和、時間ないんでしょ?いいよ…一人で帰れるから」
Γ馬鹿。よくねぇよ」
そう言った大和に思わずあたしはクスクス笑みを漏らした。
Γあ?…何?」
Γいや…、あの頃と全然変わってないなぁーって。大和、いっつもあたしの帰り気にしてたから。ほら、同窓会の時もそうだったから」
Γあー…」
大和は小さく呟きながら語尾を伸ばし、鼻でフッと笑った。笑ってすぐに大和は元の表情に戻し、一息吐きながら俯く。
そんな大和を見てから何も話す事がなくなったあたしは窓に視線を送り、そこから見える外の風景を伺ってた。
沈黙の時間が過ぎるに連れて、何をどう話したらいいのか分からなくなってた。
暫くそんな沈黙が続いた時、
Γあの時アユにいい忘れた事…」
沈んだ大和の声が車内を響かせた。 呟いた大和の声に目を向けると、大和はあたしを見ていて――…
Γ俺…、俺やっぱアユじゃなきゃダメだわ」
そう言って大和はあたしから目を逸らし、フロントガラスをずっと見てた。
いい忘れた事――…あの時、大和が言おうとしてた続きの言葉が大和の口から漏れた途端、何か分かんないけどあたしは大和から目を避け、窓の外をずっと見てた。
そんなあたしに大和は――…