甘い恋の誘惑
Γ卒業する前…。大和に彼女が出来た時、アユ…涙流してた」
あの頃の記憶が、だんだんと蘇ってきた。あたしに付き合おうって言ってきた大和はすぐに女を作ってた。
帰りぎわ、いつも一緒に歩いているその姿に…一度だけ、たった一度だけ涙を流した事があった。
不意に出た涙の理由は分かんなかったけど、莉子に知られないようにと流した涙。その涙に莉子は気付いてた…
思わず出てしまったあたしのため息にΓやっぱり…」って呟いた莉子の密かな声が聞こえた。
Γアユのさ強がってる所とか気遣ってる所とか、あたしは凄く分かるよ?」
Γ……」
Γアンちゃんが居たから。アユはアンちゃんと比べられるの凄い嫌がってたもんね…」
Γ……」
Γでも、もうそれって関係なくない?あたし1年前にアンちゃんに出会ったんだ」
莉子はそこで小さく息を吐き出し、またゆっくりと言葉を繋いだ。
Γ1年前、たまたま行ったショップにさアンちゃんが働いてた。初め、帰ろうかどうしようか悩んでたんだけどさアンちゃんから話してきたんだ」
Γえ、アンが?」
不意に出て来たアンの名前に思わず莉子を見て少しあたしは目を見開いた。