甘い恋の誘惑
Γうん。アユは元気?って…。それって考えてみればおかしな話だよね。なんでそれをアユじゃなくてあたしに言うのって…」
Γ……」
Γだからさ、あたしじゃなくてアユに聞きなよ。って言ったら“アユはあたしの事が嫌いだから”って、そう言って哀しそうに笑ってた」
Γ……」
確かにあたしはアンが嫌いだった。何もかもアンの物にしていくアンが大嫌いだった。
でも今、そんなに思わないのは何でだろう。それに…アンがそんな事、言うなんて考えられなかった。
Γアユが羨ましかったってさ…」
Γえ?」
ポツンと呟かれた莉子の言葉にあたしは恐る恐る莉子を見て、またゆっくりと視線を下に落とした。
Γ小さい時からママはアユに優しかったって。あたしが泣いたりワガママ言ったら、それなりにママはあたしに構ってくれてたって」
Γ……」
Γでも、そうじゃなくって、その後いつもママはアユを抱き締めてたってさ…あたしの事なんて一度も抱き締めなかったのにママはいつも優しくアユを抱き締めてたって」
Γ……」
Γそれが羨ましかったって。突き放されてる様に感じたってさ」
Γ……」
Γだから、アユに負けたくなかったって。そう言ってたよ?」
莉子はあたしの顔を覗き込む様にして、あたしの顔を見つめた。