On The Wind
「あーやかっ」
呆れた顔をしながら私の顔を覗き込む。
「ああ、ごめん」
そうやっていつもすぐ自分の世界入り込むんだからと愚痴をこぼし、口を尖らす。
平野雪乃、幼馴染でなんでも話せる心地のいい関係。
「で、聞いてた?」
聞こえてるはずがない。
とりあえず考え込むしぐさをし、わからないと答えた。
「もお!もうすぐ上の学園祭じゃん、行くでしょ?」
彼女が指す“上”とは、ひとつ上の学年ではなく高校のことだ。
「今回いつもより早くない?」
「それはさっき説明してました」
私の疑問に答えがないまま、雪乃は話を進めた。
「だって、秋元先輩に会いに行かないと!」
雪乃は頬に手を当て、すぐに自分の世界へと旅立った。