On The Wind
3-Bを出ると、一気に現実に戻された気がした。
新垣先輩なんていないんじゃないかとも思うほど。
「ね、新垣先輩に一目惚れ?」
「ちょ、雪乃。違うってば」
えーっと大げさにリアクションした後、
しょんぼりと肩を落とした。
「絶対そうだと思ったのに」
好きとすぐ言えるくらいの感覚があったのか
わからなかった。
あったかもしれないけど、
ただ、あの雰囲気にまとわれてたからのかもしれない。
だけど、高校生と中学生で。
学園祭が終われば、会いにいくのも無理で。
この気持ちを試せる瞬間は、もうないと思うから。
「くらやみ・・マジックかも」
「・・なにそれ」
そんな言葉でごまかしてみて、少しよれてしまったしおりを開いた。