大空の唄
いよいよ、か…
既に緊張は最上級に達していて
苦しいほどに胸を締め付ける
「もう!2人とも表情が堅いよ
スマイル、スマイル」
そう言って陽が俺たちの背中を
バシバシと強く叩いた
「「いってー」」
じわりと背中を痛みが走る
「音楽を楽しまなきゃ
僕たちの音楽を…」
陽はいつものように八重歯を
キラリと光らせガッツポーズをして見せた
そうだった…俺たちは俺たちの
歌を奏でるためにここにいるんだ
空を見ると同じ事を考えているようで
その表情はどこか穏やかになっていた
舞台に立ち深呼吸をする
空がゆっくり目を閉じ
手を上げるのを合図に曲が始る
空の歌は空気を震わせ
聞くものの心を魅了する
この頃、まだ空は今ほど
心を閉ざしてはなかった
暗い闇は持っていたものの
それを分散する術も持っていたから…