大空の唄


人気になりたいとか
有名になりたいとか
そんなんじゃない


ただ俺らは音楽が好きで
その大好きな音楽を


自由に奏でたいだけ…


ただそれだけだったのに


学校近くのスタジオで練習すると
どこから情報が漏れたのかすごい人だかり


「あー!毎日毎日うぜーっ」


防音になった部屋で空が叫ぶ


「まあまあ」


陽がなだめても相変わらず
眉間にシワを寄せる


最近空はイライラしっぱなし


「そんなんじゃ、いい歌が
作れねーぞ」


練習する手を止め茶化すように
笑うと空はキッと俺を睨み付けた


「分かってるよ…でも……

今まで人を避けてた俺には」


接し方もわかんねー


俯いた空は小さくでも確かにそう呟いた


空は空なりに悩んでたってことか



人気になりたいわけではないけど


たくさんの人に自分の存在が
認められる事。


空は素直にそれが嬉しかったんだろう


俺は空の肩に手を置いた


「ゆっくりでいいんだよ
焦る必要なんてないだろ」


目を真っ直ぐ見て軽く微笑む


「な、なんだよ、急に
気持ちわりーな!!」


そう言って直ぐに俺の手を
払い除けた空の口元が微かに緩む


ツンデレ野郎め…


そう思いながらも嬉しかった
空が俺ら以外に心を開こうと
努力していることが空が闇から
抜け出そうとしている証拠だったから


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