大空の唄
俺たちのデビューが決まったのは
それからもう少し後の話
今でも空は周りを全て敵だと思っている
関わろうとしてくるものを
冷たく突き放し
孤独を埋めるように歌い仕事をこなす
ただ1人、絢音ちゃんだけは違ったけど…
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「翔?…翔!」
陽の声で現実に引き戻された
「どうしたの?ぼーっとして」
「ん、昔のこと思い出してた」
そう言うと納得したように頷く陽
ねぇ…と視線をベランダから見える
真っ暗な闇に向けたまま陽が呟く
「あの2人、気付くかな?」
「んー鈍感だからね
でも気付くんじゃない?
そのうちさ…」
ベランダに出ると肌寒い風が
頬を冷たくくすぐる
見上げた空はいつものように
優しくでもどこか儚く輝いていた
─僕らはいつだってちっぽけで
そんな僕らが歌う唄は
いつだってちっぽけな唄
空の歌声が頭の中で響いて
俺はゆっくり目を閉じた