大空の唄
ライブ前日の今日も
終始にやけっぱなしのあたし
「なーににやにやしてんの」
「ギャー」
バシッと強く背中を叩かれ
衝撃と驚きで悲鳴にも似た声を
漏らしてしまった
振り返るとあたしの反応を
可笑しそうに笑う自称美人店長、梨華さん
「もう、びっくりして
心臓止まりそうでしたよ」
「バイト中にニヤニヤしてたのは
どこの誰かな〜?」
うっ…
核心を突かれて何も言い返せない
前にも同じようなことを
蒼空に言われたような気が…
「何かいいことでもあった?」
言葉に詰まるあたしを見て梨華さんは悪戯に笑う
「聞いちゃいますか?」
あたしはここぞとばかりに
好きな先輩とライブに行くことを告げた
もちろんノロケ付きで
頷きながら聞いてくれた梨華さんは
そっか、と小さく漏らし
「絢音、好きな人いるんだ」
若いね、そう付け足すように微笑んだ
よくわからないけど
その笑顔が何かを言いたそうで
あたしは首をかしげた
「蒼空とは仲良くやってる?」