大空の唄


開場の時間になり広い会場に入る


まだ始まってもないのに
ざわざわと人の会話が1つの大きな音のようにホール全体にこだましていた


やっぱりライブ前のこの雰囲気は何度来ても慣れないな


緊張と興奮と期待とが混ざりあった
何とも不思議なドキドキ感


ざわざわとしている会場と対照的に
静かに凛とあるステージのドラムやアンプ
マイクにたくさんのコード等



さらに今回は前列のセンターだから
VIP待遇されたような優越感がプラスされる


「すげー!!かなり距離近いじゃん!!」


先輩はキラキラと目を輝かせ
ステージの楽器をジッと見つめる


手を伸ばせば届きそうなほどステージに近い


あたしの正面あたりにマイクがあるから
あたしの正面は空だと思う


普段は生意気な梶原 蒼空
でも今日はSONG OF SKTの空である


どうしよう…感動で気絶するかも


このあいだもっと至近距離で弾き語りを見たくせに


あたしは本気でそう思った


そんなことを考えていると薄明るかった会場の明りが落ちる


その瞬間、辺りに一瞬歓声が響きすぐに会場内の全ての音が止んだ


おそらく会場内の全てのファンが
一斉にステージに視線を移す


その間は怖いほどの沈黙だった


その沈黙を破ったのは翔君の奏でる重低音だった。


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