大空の唄


『動揺してんの?』


くそっ!!


翔の言葉がウザいほど頭を駆け巡る


動揺なんてしてねぇ


翔の言葉を消すようにそう繰り返し自分に言い聞かせる


あんなところにアイツがいて
正直ほんの少しだけビビった


いつもは観客どころか正面の最前列、俺の一番近くにいる奴さえ


意識したことなんてなかった


それは俺たちと何の縁も所縁もないヤツだから


でも、アイツは違う。


バイトも一緒でほぼ毎日俺んちに来てて
唯一本当の俺たちを知っている


そんなヤツがいて多少びっくりするのは当たり前だ


これは動揺してるわけじゃない


何故動揺という言葉を頑なに否定するか
正直自分でも分からなかった


ただ、否定せずにはいれなかった


大きくため息を着く


すると、ライブの映像が一気に頭に流れ込んできた


目の前でニコニコ笑い
時々隣のチャラチャラした男と
楽しそうに話すアイツ……


アレが例の先輩ってやつか


着替えを済ませカツラを被り
いつもと少し違う黒渕の眼鏡をかけた


俺には関係ねぇ…


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