大空の唄
「そら…空っ!」
ゆっくり目を開けるとぼんやりとした視界の先には
現実の世界が広がっていた
レコーディング後の楽屋と
既に身支度を終えた翔
「陽は?」
「先に帰った
俺たちもそろそろ帰ろう」
どのくらい寝てたんだろう
携帯を開くと時間を表す数字は
pm 9:03と表示されている
レコーディングが終わったのが
8時過ぎだったから、約1時間か
「お前うなされてたけど
またあの夢?」
そう、またあの夢なんだ…
「あぁ…
昔は何もかも切ない程に鮮明で鮮やかだったのにな」
俺は真っ暗な空を見上げた
「今ではもう色さえ失った」
真っ暗な暗闇が広がる大空
「きっとそのうち全部なくなって
消えてしまうんだろうな」
都会の大空から星が消えてしまったように…
儚くて、切ない…
時の流れがそうさせるんだ