大空の唄


どれぐらい経っただろう
暫くそんなことを続けていると


「お前、近所迷惑」


背後から聞き慣れた声が聞こえた


低音で無愛想でも優しくて、綺麗な声


ドキンと規則的だった心音が一瞬だけ不規則になった


あたしは慌てて振り返える


「ほ、本物の蒼空!!」


そこには携帯をパタリと閉じ
呆れたような表情の蒼空がいた


と同時にあたしの携帯からは
プーップーッという虚しい電子音が響く


「偽物の俺がいるのかよ」


「そういう訳じゃないけど…」


ついさっきまで電話していた人が気が付けばすぐそこにいて


この状況に驚かないわけないじゃん


「何でここいるの?」


「それはこっちの台詞だよ

今何時だと思ってんの?」


今?


あたしは携帯で時刻を確認し
その通りに蒼空に伝えた


「11時50分だけど?」


「だけど?じゃねー!!
こんな時間に一人で公園にいる
女お前ぐらいだよ!!

世の中お前が思ってる以上に物騒なんだよ」


懲りないな、蒼空はそう言って
深いため息をついた


え…


もしかして…


「蒼空…心配して来てくれたの?」



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