大空の唄

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「えー…今日はお忙しい中
お集まりいただき誠にありがとうございます」


立ち上がり握った手をマイクに見立て
司会者っぽい言葉を選ぶ翔くん


場を盛り上げる陽くんとあたし


そして…相変わらずポーカーフェイスな蒼空


テーブルには大量のお菓子と
お酒とジュースが置かれている


では…そう言って翔くんが
あたしたち1人1人の表情を確認する


その一瞬だけ部屋がシンと静まり返ったが


「全国ツアーの成功に…」


「「「かんぱーい」」」


すぐにまたワッと盛り上がった


ざわめきにガラスのコップとコップが重なる
カツンと言う音が混じる


「みんなおかえり」


笑顔でそう言うと蒼空以外の2人は笑顔と
「ただいま」を返してくれた


「蒼空くんおーかーえーり!!」


蒼空は機嫌が悪いわけではなく
ただここで盛り上がるタイプでないだけ


そう知っていながらワザと嫌み混じりで返事を求める


「ああ…」


戻ってきた、当たり前になりつつあった毎日


いつもと何ら変わりないという幸せ


そんななかで唯一変わった
ことがあるとするなら…


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