大空の唄


サユリさんが少し顔を歪めたのを見た瞬間


ハッとして両手で口を覆った


「すみません」


何聞いてんだろう…


図々しい自分の発言に肩を落とし俯くと


肩にそっとサユリさんの手が置かれた


あたしは驚いて顔を上げる


「良いのよ少し驚いただけ

凄く清純そうな子だったわ
真面目そうで可愛くて
浮気なんて一番しそうにないタイプ

だからかな?
海斗はその子の全てを信じていたの」


「だけど…裏切られたんですね」


「そう。あの時の海斗
今までで一番落ち込んでた


もう、一生恋しないんじゃないか
ってくらいにね」


先輩にそんなことがあったなんて…


そう思うと胸が苦しくなった


「それからの海斗は笑ってもどこか無理矢理で

ぼんやりしてはため息で
どうしようもなかったの

………絢音ちゃんに出会うまではね」


あたしに、出会うまでは?


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