大空の唄


このあいだと同じように


編集長に挨拶をして説明をうけて準備をする


「スタンバイお願いします」


いつもと同じ、はずなのに
そう感じさせないのはこのざわめきのせい


これは気のせいか、思い込みだろうか


もしそうならばそれでいい


…むしろそれがいい。


対談も撮影も精一杯、偽物の笑顔を作る


こういうのは得意だ


平気なふりして自分を隠すことは…


「疲れた〜」


撮影も終了し、控室で脱力する俺ら


何も、なかった


むしろアイツの姿さえ見なかった


「気疲れしちゃったよ」


珍しく陽が本気な顔して弱音を吐く


でも、よかった


本当によかった。


そう安堵した時だった


コンコン


「空君、ちょっと来てもらえるかな?」


ノックして返事も待たずに部屋に入って来たのは松田だった


お、俺?


「いいかな?」


顔を歪ませた俺に気付いたのか
松田は少し申し訳なさそうに尋ねる


その問いに、"NO"って選択肢は存在するのかよ


俺は重たい身体を無理矢理奮い起たせ立ち上がった


< 210 / 378 >

この作品をシェア

pagetop