大空の唄
「よろしくね、空君…」
コイツがこっちの世界にいると知った時点で
いつかこうなることも薄々感じていた
「どうしたの?
まさか、緊張してる?」
喉でククッと笑われ
カッとなりそうな自分を必死に制御する
「ふっ、まさか」
誰が、緊張なんかするもんか
「びっくりしたんだよ
まだ懲りずに卑怯な手使って
自分の地位を高めてたんだな…って」
ナミの耳元に編集長には聞こえない程の声で囁いた
驚いているのか
怒りが込み上げて来たのか
目を見開いたナミに
ざまーみろ
心の中でそう呟いた
この、腹黒女め…
だけど、どんなにけなしても
決して治まることのない心のざわめき
このざわめきの正体は
まだ分からないまま
「楽しみ…」
そう呟いたナミの声は
余りに小さすぎて
俺の耳に届くことはなかった