大空の唄
陽は一瞬料理する手を止めた
「ドラムをしている間
僕は素直な自分でいられる」
陽の声とトントンと言うまな板の音が響く
「辛い過去も苦しい現在(イマ)も
嫌なことばかりのも毎日も…
全部忘れられる
そんな自分だけの世界が生まれる」
本当に楽しそうに語る陽の顔は、いつも見ているドラムを奏でている時の顔だ
「そんな自分だけの世界に
翔のベースと空のギター…そして歌声
そうやって俺の世界は広がって
もっともっと楽しくなっていく」
俺はふと目を閉じた
真っ暗な瞳の奥に浮かぶのは
眩しいスポットライトの光と
心地よく調和するメロディー
確かに俺たちは音楽という世界の中だけでは
自分らしく…そして自由になれる
「僕は音楽が大好きだ
空が創る音楽はもっと大好きだ
空はどう思う?」
空はどう思う?
あぁ…俺は
いや…俺も
音楽が大好きなんだ