大空の唄
「絢音ちゃん!」
再び後ろから名前を呼ばれ
ドリンクを注ごうとしていた手を止める
振り返ると心なしか真剣な表情の梨華さんと目が合う
「絢音ちゃんは人から聞いた
大切な人の噂って信じる?」
大切な人の噂?
首をかしげるあたしに梨華さんはほほ笑むと
「あたしは信じない。噂になっている本人が
大切な人ならなおさらね」
そう続けた
あたしは手に持ったグラスを一度テーブルの上に置く
「どうしたんですか?急に…」
「うーん…あんまり詳しくは言えないんだけどね
噂が原因で友人ともめちゃってさぁ
絢音ちゃんだったらどうするかなーって」
梨華さんはあははと苦笑いをしてあたしの方に近づくと
さっきあたしがテーブルに置いたグラスを手に取って氷をいくつか入れると
そこに綺麗な緑色のメロンソーダーを注いだ
「やっぱさ…大切な人は信じてあげるべきだと
思うんだよね。…もし仮に裏切られる結果になったとしても…」