大空の唄
—大切な人は信じてあげるべきだと思うんだよね。
もし仮に裏切られる結果になったとしても…
何故か分からないけどその言葉が胸に染みてきて
あたしはただ、じっと梨華さんの手元を見つめた
「本当に大切な人なら噂よりもその人の言葉を信じたい」
不意に蒼空の顔が脳裏に過る
「じゃあ…
もしその相手に本当のことが聞けない状況だったらどうしますか?」
梨華さんは注ぎ終えたグラスの中に缶詰のサクランボを一つ落とす
「例えばだよ!すごく大げさに言うなら
もし相手がカギのかかった部屋にいるなら、ドアを破って入るし
炎の壁の中にいるなら…炎に飛び込む
それくらい、本当のことを知るのには勇気がいると思うんだよね」
はいっとグラスを乗せたお盆をあたしに差し出す梨華さん
あたしはそれを受け取ると軽く一礼して
梨華さんに背を向ける
本当のことを知る勇気…
その言葉がぐるぐると頭で渦巻いていた