大空の唄


「ここは俺んちだよ」


温かい紅茶をコップに注ぎながらそう言ったのは


服を着替え化粧を落とし、いつもの姿に戻った陽くん


「さ、さすが」


一般庶民で高校生のあたしには到底手の届かないようなマンション


リビングは広くて、そこには大きな液晶テレビとカラフルな家具が配置されている


そういえば空以外のメンバーの家に行くのは初めて


陽くんらしい部屋だな


「広いけどね、一人で住むには少し寂しいよ

でもセキュリティー面とか考えるとここが一番なんだよね」


「陽くん…」


少し切なげに微笑む陽くん


そっか…


人気になればそれなりに色々なところに配慮しなくちゃならない


良いことばかりじゃないんだ


「翔くんはどこに住んでるの?」

ふと気になって訪ねてみる


「俺もこのマンションだよ
ここの2つ上の階」


翔くんも同じマンション?


「ここは広すぎる

だから僕らはいつも空の部屋に居候してるんだよ」


「空の部屋は広すぎず狭すぎず丁度いいからな」


えっ?


「何で空だけ違うマンションなの?」


そう尋ねた瞬間


まるでこの質問を誘導されたような


そんな気がした


なぜなら、二人が目を見合わせて何かの合図をしたように頷いたから


「それも含めて、絢音ちゃんに話したいことがあるんだ」


「だから僕が変装して、絢音ちゃんをここに連れてきた」


話したいこと?


「空を…闇にのまれてしまった空を…助けて欲しいんだ」


< 246 / 378 >

この作品をシェア

pagetop