大空の唄
俺は雑誌を置き
ゆっくり立ち上がった
陽の部屋にあるフカフカのソファーは一度深く座ってしまうと起き上がるときに面倒だ
やっとの思いで立ち上がると
俺はベランダの戸を開け外に出た
ひんやりとした風が火照った頬に当たって気持ち良い
俺はふと空を見上げた
昼間は雨が降って嫌な天気だったのにもうすっかり空もご機嫌のようだ
「お前らの部屋から見える星は
本当に綺麗だよな」
翔と陽がこそこそとベランダにやってきたことを知っていてワザと呟く
俺のマンションはここより都会だから空を見たって星は見えない
夜空はいつだって薄紫に不気味に光っているだけ…
「そう…だな」
そう言って翔が空を見上げ
続くように陽が空を見上げた
星は誰をも平等に照らす
それを見ていると自分の存在を認められているようなそんな感覚に浸れる
ふいに、唄が歌いたくなった
─あの星に触れたくて手を伸ばす
あの星に触れたくて背伸びする
でも、何をしたってソレには触れることさえ出来ない
憧れは掴めないから憧れと呼ぶのだろうか?
だとしたら人生は無意味な努力の積み重ねかもしれない