大空の唄
「おいしい!!」
「よかった…」
美味しい料理に囲まれ他愛ない会話をする
そんな幸せに浸っていると
「絢音ちゃん」
突然改まったように、梨華さんが私の名を読んだ
その声が、何故か切なくて、あたしは食べる手を止め梨華さんの方を見た
「聞いて、欲しい話があるんだ」
口に入っているものをごくりと飲み込み
「何ですか?」
と微笑んでみたけど、その真剣な目には敵わないと思った
緩ませた口を閉め
梨華さんからでる次の言葉を待つ
目の前のコンソメスープからもわもわと
湧き上がる湯気も
部屋の外で聞こえる店員さんの声も
外で吹いている風の音も
全部、全部、この部屋とは別世界のようで
全部、全部、動きが停止しているような
そんな気分になった
「空の、話なの」