大空の唄
梨華さんはにこっとほほ笑み
物語を読むように語り始めた
「私たちの両親のことは2人から聞いた?」
あたしは、静かにうなずく
「歌手、梶原和葉は天才と呼ばれた
天性の才能の持ち主だと幼いころから囃し立てられ
大人たちに期待という名の十字架を背負わされた
物心ついたときには彼女の運命は決まっていたの
物心ついた時から、彼女に自由はなかった
あったのは、大きな十字架と拘束という鎖
あたしが見つけた彼女の日記にはこう書かれていた
“自由が欲しい、普通の人生が送りたい
ただ、単純に歌が好きで居たかった
まるで操り人形のよう
まるで囚人のよう
大人たちがあたしに歌わせる愛ってナニ?”
幼いころから歌手としての期待を受けてきた彼女は
両親からの“愛情”というものさえ知らなかった
少しでも不調なら大人から冷たい視線を送られ
風邪でのどを痛めたときには罵声を浴びせられることもあったみたい
常に、孤独と戦っていた
そんな彼女に…ある時大切な人が出来たの」