大空の唄
「当時5歳だった私は母に
絶対家から出ないで、誰が来ても出ないで
そう言われてずっと家にいた
あのころの生活は異常だったな…
毎日100近くの電話とチャイムが鳴っていたんだから
あのころの私は何かがマヒしていた
その生活が当たり前すぎて何も思わずそれを無視して
気にも留めずひたすら家で留守番できていたんだから
さすがに、危険を感じた彼女はファンたちの目を盗んで
私を昔からの知人の元に預けた
そこから、彼女の歯車は狂うというレベルでなく砕け散っていった
彼女の精神はいつ崩れるかも分からないレベルに達していて
仕事だけは何とかこなしていた
そんな彼女の唯一の支えが彼女の大切な人
彼は、全力で彼女を支え、寄り添った
でも、ついに悲劇は起きてしまった」
梨華さんは、ここまで言うと言葉を濁した
何かを躊躇い、思いつめたような顔をしていて
心なしかその顔は青ざめていた
「無理、しなくていいですよ」
あたしが心配そうに見つめると
「ごめんなさい。大丈夫よ」
梨華さんはそう言って必死に笑顔を作った
あたしはそんな梨華さんを何も言わずに見つめる
いや、何も言えなかったんだ…
梨華さんは大きく深呼吸をして続けた
「彼女を支え、愛し、信じ、共に生きてきた
彼女の唯一無二の人が…殺されたの
彼女を応援すべき存在であるファンの1人の手によって・・・・」