大空の唄


どうして?どうして…和葉さんが…


胸が苦しかった


そんな事実があったということに


和葉さんを傷つけて闇に突き落とした人が
今もこの空の下でのうのうと暮らし


和葉さんだけが闇の中で苦しんでいるの?


「許せない!

和葉さんを救うことはできないんですか?」


梨華さんはゆっくり首を横に振った


「和葉は…母は牢獄の中で自殺したわ


やっと、自由になったの」


気が付けば梨華さんの目からも大粒の涙が溢れていた


「知ってほしかったの
加害者としての蒼空の母でなく

被害者としての母の真実を…


蒼空は、母の意思を受け継いだかのように
昔から心を閉ざしていた


本当のことなんて知らないのに
まるで全てを知ってるかのように」


理由は分からないけど


梨華さんはそう付け足して赤くなった目を細めた


「でもね

そんな蒼空の闇に光がともった瞬間があったの」


そう言って梨華さんは鞄を開け何かを探し始める


「絢音ちゃん、小さい時からピアノ弾けたでしょ?」


探しながらあたしにそう尋ねる










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