大空の唄
音は宙を舞う -SORA-
カツカツカツ…
カツカツカツカツ…
・・・
「あ゛-!!」
全然浮かばん…
持っていたシャープペンシルを放り投げ
荒々しく目の前のB5の紙を握りつぶす
「あーまだ真っ白なのに…」
俺の手元を覗き込んでいた陽が慌てたように言うが
お構いなしにその紙をゴミ箱に放り込んだ
「ナイッシュー!」
翔はそう言って持っていたベースを置いて手を叩く
ギターにベースにドラムにアンプ
その他もろもろいろいろなものが無造作に置かれた
スタジオの中で同じように置かれた小さな机と椅子
俺が、いつも音を作り出す空間
「つーか前から思ってたけど
普段こんなところで曲作れる方が不思議だわ」
翔はそういって“ははっ”と笑い
“たしかに”と納得したように陽が頷いた
そういわれてみればそうかもしれない
普通、ここで曲を作るときは
陽のドラムや翔のベース音が響いている
お世辞にも静かだとは言えない
集中できる空間でもない