大空の唄


バンッ


閉じられた扉を勢い良く開く


扉はまるであたしの怒りをそのまま表現したかのように大きな音を部屋中に響かせた



「いい加減、仕事しなさいよ!!」


中を確認するよりも先に溜まっていた思いを吐き出すが



「……」



返事は、やはり返ってこない



こうなることはある程度予想はしてたけどやっぱりムカつく…



あたしは地味メガネを睨み付けようと部屋を見回した



しかし地味メガネを見つけたあたしは、ガクッと力が抜けるように身体機能と思考力が停止した



目線の先には確かに地味メガネがいた、別に他にもたくさんの人がいたわけでもなく、地味メガネがただ一人で



ソファーに横になりスヤスヤ気持ち良さそうに寝息を起てていた…



最悪、仕事もしないで…



もはや怒りと言うよりも呆れて諦めに近い気持ちになりながらソファーの近くにある椅子に腰をおろした



ソファー座りたいんだけど…



寝顔を除き込むとメガネの奥に潜んだ長い睫毛が目に留まる



初めて近くでまじまじと見た顔は意外にも肌も鼻の形も綺麗で小顔で…


もう少しがんばったらかっこいいと思うんだけどな


なんて考えているとふと瑛さんの言葉が頭に響いた


"あいつは不思議なやつだよ"


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