大空の唄



ブーブーブー…


「…ん?」



暗闇の中、ふとポケットからの振動で重たい瞼を無理矢理開ける



あれ?あたしいつの間に寝てたんだっけ?



てかあたしは今どこにいるの?



ぼーっとする意識の中必死に記憶の欠片を探す



えっとバイトの休憩中に地味メガネの寝顔を見ててそしたら急に眠たくなって…



……………って



バイトの休憩………



もしかして!!!



慌てて顔を上げ時計を見ると休憩時間を20分も過ぎていた



ハッとしてソファーに目をやるもそこにいたはずの地味メガネの姿はなくて



代わりに頭の中に鬼のような地味メガネの姿が浮かぶ



ヤバい……ヤバすぎる



一気に顔から血の気が引く



そして勢い良く立ち上がった時



あたしの肩からヒラリと何かが滑り落ちた



「これ…?」



視線を落とし落ちたものを拾い上げるとそれは厚手の黒いジャンパー


誰のだろう?


きっと誰かが寝ているあたしに掛けてくれたであろうそのジャンパーをじっと眺めて



匂いも嗅いでみるとほんのり香水の匂いが鼻をくすぐる


でもやっぱり…匂いじゃ誰のか分からないな



「いや、今はそれどころじゃない」



とりあえず今はジャンパーを椅子に掛け飛ぶようにフロントに向かった


< 31 / 378 >

この作品をシェア

pagetop