大空の唄
「では305号室のお部屋になります」
どこか人目につかないところはないかと考えた結果
俺が駆け込んだのは近くのカラオケ
指定された部屋に入ると、カラオケ独特の匂いが鼻をかすめた
だいぶ落ち着いてきた絢音をソファーに座らせ、電気を点ける
『今週のゲストは…この方です!!』
大きめの薄型テレビからは何かしらの音が止めどなく流れる
その音が、今日は妙に心地よく感じて
この何とも言えない雰囲気を上手く調和してくれているように感じた
「とりあえず」
俺は絢音との視線を合わせるようにしゃがんだ
「何で、泣いてんだよ?」
すると絢音は、乾き始めた目に再びいっぱい涙を溜めた
「だって、蒼空が・・・」
「は?聞こえない!」
絢音の声が小さいのか、環境の問題なのか全く絢音の声が聞こえない
「蒼空が!蒼空が初めてあたしの名前、呼んでくれたから…」