大空の唄
“信じて”と言われて裏切られたことはたくさんある
でも“信じてなんて言わない”と言われたのは初めてだった
だから分からない
コイツが何を求めているか
しばしの沈黙が続いた
タイミングを逃してしまったように
両者とも視線を反らそうとしない
「俺に、何を求めるんだ?」
意を決して沈黙を打ち破ったのは俺だった
「何も求めてない」
絢音は表情一つ変えずにいう
余計に訳が分からない
“信じなくていい”そして“何も求めてない”
分からない…
「ただ、聞いて欲しかったのこの曲を
あたしも覚えてるよって伝えたかった
そして…」
そう言って絢音は黙り込んだ
カラオケ内に響く音の曲調が変わった
俺たちが先週リリースした曲で、俺らには珍しいバラード系の曲調
その音が俺らの間に流れる空気と妙に調和している
言葉を詰まらせた絢音は一度俯くとすぐに顔を上げた