大空の唄



私はその日から、その神父さんのもとで暮らすようになった



だけど、あたしにあるのは虐待の心身的な傷痕と深い悲しみ・・・



出口のないトンネルをさまよっているような、そんな感覚だった



不思議なほど辛い過去はいつまでたっても鮮明だった



そんなあたしが出会ったのは教会にある白いグランドピアノ



『これ何?』

『これはピアノっていうんだよ。弾いてみるかい?』


恐る恐る鍵盤に触れる


~♪


きれいな音…


『好きな時に弾いていいよ』


神父さんはそう言って私に分かるように楽譜の読み方を教えてくれた


小さな手をいっぱい広げて毎日朝から晩まで人が来ない日は毎日弾いた


きれいな音色に心が洗われていくようなそんな感覚だった気がする


ずっと、ずっと無心で鍵盤を叩いた


今思うと音楽が好きだったんだろうな…


音楽は蒼空にも出会わせてくれた


蒼空のおかげであたしは音楽の楽しさを知った



そして神父さんはあたしにたくさんの愛情をくれた


両親があたしを愛していたことも教えてくれた
愛の形はすべて同じじゃないんだよと


だけど、ある日事件は起きたの・・・


< 338 / 378 >

この作品をシェア

pagetop