大空の唄
それは蒼空と出会ってしばらくたったある雨の日だった
『絢音、君は愛されるためにこの世に生を受けた
そして誰かを愛するためにこの世に生き続ける
どんな命も醜い命などない、どんな命も輝き美しい
そのことだけは、絶対に忘れないで』
神父さんはそう言ってゆっくりと目を閉じた
その顔はとても穏やかで、まるで眠ったようだった
あたしは神父さんの言った言葉の意味なんて当時は分からなかったけど
その言葉は、魔法の言葉のように何年たっても忘れることはなかった・・・
神父さんはね、末期のがんを患っていたみたいなの
本当はずっと前から入院が必要だったんだけど
『これがワシの運命なのだろう』
神父さんはそう言って、たいした治療も受けずずっと私のそばにいてくれた
その時の私には死というものを理解する能力がなかった
だけど、神父さんが起き上がることはもうないということは直感的に薄々感じていたのかもしれない…
以前にも経験したことのある孤独感
あたしはいつまでも冷たくなった神父さんの横で泣き続けた
あたしをおいていかないで。ひとりにしないで…といいながら
そして私はそのまま、神父さんの知り合いのところに行くことになった
もう教会に戻る間もなく、蒼空に何も告げられぬまま…
私は誰もいない遠いところへ行ってしまった