大空の唄



「おい!蒼空!
ぼーっとするな!!」


そんな翔の声にハッと我に返る


「あ、わりぃ」


辺りを見渡すとそこにはいつもの光景が広がっている


ドラムの前で微笑む陽にベースを抱える翔


たくさんの機材、床に置かれた飲料水


狭くもないがたいして広くもない密閉された空間


「あと1週間でライブなのにさ!

しっかりしてくれよリーダー!」


そう言って翔に思いっきり背中を叩かれる


いった…


叩かれた場所がジンジンと熱を持つ


「3人で最高のステージを作ろう

俺たちを心から愛して応援してくれる人たちのために…」


心から愛して応援してくれる人のために…


愛とかそんなものただのきれいごとだと思っていた


そんな俺が、愛されている


何度聞いても違和感を覚えるフレーズだと思う



「俺たちが出来ることはそれだけだよ」


「そうだな」


翔の真剣な目に捉えられ、俺は逃げるように視線をそらすとただ一言だけそう答えた


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