大空の唄
音は伝える -AYANE-
時はあっという間に流れ、ついにライブの日がやってきた
「何かあたしまで緊張するな…」
あたしは誰に言うわけでもなく1人でぽつりと呟く
周りはざわざわと賑わっていて、薄暗い空間でたくさんの人が押し合ってその時を待っている
誰もいなければとても広い空間なんだろうけど
人が多すぎるせいでとても狭く感じてしまうほどだ
「それにしても、本当にここに立てるなんて…」
あたしは、しみじみと辺りを見渡した
ここは奇跡的にとれた前列のセンターで、ちょうど目の前には1本のスタンドマイクがセッティングされている
数分後には、ここに空が立っているはずだ
意地を張って“自分で前列センター取ってやる!”
って言っちゃった後、正直どうしようって思ったけど…
誰よりも近くでみんなを応援したいというあたしの思いが神様に届いたのだろうか
チケットの当選通知が来たときには今世紀最大と言っても過言じゃないくらいテンションが上がった
ドキドキと強く脈打つ心臓は、期待と少しの不安が入り混じった緊張の現れだろう
大丈夫、みんな頑張ってたもん
あたしはそう心の中で唱えながら自分の気持ちを落ち着けた